心理学で学ぶ頼み方① フット・イン・ザ・ドア
フット・イン・ザ・ドアとは、まず小さな頼みごとを受けてもらってから、(本来の目的の)大きな頼みごとも受けてもらうというテクニック。日本では段階的要請法とも呼ばれています。企業やセールスマンもよく使う方法なので、普段の生活でも気づかないうちに体験してる人が多いと思います。
フット・イン・ザ・ドアの使用例
①街角で
A: 「署名活動をしているのですが、署名だけでもご協力いただけますか?」
B: (署名するだけならいいか)「はい」
A: 「ありがとうございます。もしできたら募金をお願いできませんか?少しだけでもいいので」
B: (えっ。募金?仕方ないなぁ、署名しちゃったし)「はい」
②デパートで
A: 「試着だけでもしてみませんか?」
B: (今日は買う気ないんだけど、試着だけならいいかな)「はい」
A: 「とてもお似合いですね。今日の服にもぴったりです」
B: (あぁ、買うつもりじゃなかったんだけどな。試着しちゃったからなぁ)「じゃあこれ、もらおうかな」
上の例の場合、いきなり「募金してください」「買ってください」と言われてもなかなか承諾しないでしょう。ですが、最初の小さな要求(署名・試着)を承諾したことによって、次の大きな要求(募金・商品の購入)も承諾してしまうのです。
このように、先に簡単な頼みごとを承諾してもらうと、大きな頼みごとも承諾してもらいやすくなります。人は一度承諾してしまうと、二度目の頼みごとを断りにくくなるのです。最初の要求の時点では、断ることは簡単だったはず。しかし、最初の要求を承諾してしまうと、次の要求も承諾してしまいます。これは、心理学で言う「自分の行動に矛盾を起こしたくない」という”一貫性の法則”が働くからなのです。最初の要求を承諾しておきながら次の要求を断るということは、自分でとった行動を否定することになりますよね。自分の行動を否定したくないために次の要求も承諾してしまうのです。
フット・イン・ザ・ドアは、「足をドアの中に入れることができたら、商品を売ることもできる」という意味として、訪問販売などでも使われるテクニックです。悪用すると人間関係が良くなるどころか人を騙すような事になってしまいますが、上手に利用すれば頼みにくいことでも快く引き受けてもらえる便利な手法です。また、こういう手法があるということを知る事で、詐欺商法などに騙されにくくなるでしょう。
フット・イン・ザ・ドアを使う時のポイント
- ・最初の要求は承諾してもらえるよう、なるべく簡単なものにする
- ・最初の要求と目的の要求に関連性を持たせる
- ・あまり深く考えさせない
実際の場面を想定したフット・イン・ザ・ドアの使用例
①職場で
あなた: 「○○さん、そこの紙ちょっと持ってきてもらえますか?」
相手: 「はい」
あなた: 「それ、コピーとって欲しいのですが、お願いできますか?」
相手: 「はい」
あなた: 「ありがとう。そしたら50枚コピーして会議室に持っていってください」
②家庭で
あなた: 「流しまでお皿運んでもらえる?」
相手: 「いいよ」
あなた: 「できたら水につけておいてくれるかな」
相手: 「いいよ」
あなた: 「ありがとう。ついでに洗ってくれるとすごく嬉しいな」
③子どもにきちんと片付けさせる
あなた: 「床の上のおもちゃ、ここに集めてくれる?」
子ども: 「うん」
あなた: 「じゃあこれをカゴの中に入れられるかな?」
子ども: 「うん、できるよ」
あなた: 「よくできたね。そしたらお部屋に持って行こうね」
フット・イン・ザ・ドアで自分自身を説得(行動)させる
①目標:机をキレイにする
がんばろうとする心の声(以下:が): 「机の上のゴミ捨てられる?」
ズボラな心の声(以下:ズボラ): 「うん」
が: 「そしたら、ふきん持ってこれる?」
ズボラ: 「仕方ないなぁ」
が: 「じゃあ、拭いちゃおうか」
②目標:家計簿をつける
ズボラ: 「家計簿つけなきゃ。でも面倒くさいなぁ」
が: 「とりあえず、ノート開くだけならできる?」
ズボラ: 「うん」
が: 「とりあえず、ペンも用意してみたら?」
ズボラ: 「うん」
が: 「一行だけ書いてみようよ」
ズボラ: 「うん、やってみる」
が: 「ついでだし、一日分済ませちゃおうよ。」
③目標:食器を洗う
ズボラ: 「食器洗うの面倒だなぁ」
が: 「流しに持っていくだけ持って行ったら?」
ズボラ: 「うん」
が: 「お皿一枚だけなら洗える?」
ズボラ: 「うん」
が: 「こうなったら全部洗っちゃおうよ」
このようにフット・イン・ザ・ドアは、自分自身を説得(行動)させるためにも使えます。なかなかやる気の起きない時に、自分自身を少しずつ説得していくのです。段階を踏んで少しずつやることで、最後には目標を達成できるかもしれません。ここでもあまり考えすぎない事がポイントです。ゆっくりではなくトントンと、考える隙を与えずに行動するといいでしょう。自分自身をいい意味で騙していくのです。ついつい先延ばししてしまうズボラ癖のある方は、自分自身にフット・イン・ザ・ドアを試してみてはいかがでしょうか?
